小説「億男」を読んで

かみの力に人は惑わされる

億男を読んで思った一言です。
たかが紙なのに、神様が人の運命を動かすが如く、人生が翻弄されてしまうことのあるほど危険なものだと改めて思いました。

そんなお金に纏わるお話である「億男」について今回は書いていこうと思います。

億男について

文春文庫から出版
2018年発売
作者:川村元気
川村さんは他にも「世界から猫が消えたなら」や「四月になれば彼女は」などを書かれています。

あらすじ

「お金と幸せの答えをおしえてあげよう」。宝くじで三億円を当てた図書館司書の一男は、大富豪となった親友・九十九のもとを訪ねる。だがその直後、九十九が三億円と共に失踪。ソクラテス、ドストエフスキー、福沢諭吉、ビル・ゲイツ。数々の偉人たちの言葉をくぐり抜け、一男のお金をめぐる三十日間の冒険が始まる。

億男 小説より

感想

お金について考えさせられる小説でした。
お金があれば幸せなのか?
その哲学的な疑問は永遠のテーマかもしれません。
その答えは誰でも知りたい内容だと思うので、その答えの一つを物語として読みやすく、解答したのはとても面白かったです。
 
私がこの本を読んで自分なりに思ったのは
「お金はあるに超したことはない。でも、幸せはバランス次第。」でした。

私の幸せの考え方は妻、万佐子と似ています。
幸せはお金のあるなしじゃない。苦しくても小さな幸せがあれば生きていける。それが価値観でした。
これに関しては否定する人もいると思うので、一個人の理想だと思ってください。
でも、この小説を読んで、その考え方+バランスが大切なんだと気づかされました。

幸せを保つ為の金額は人それぞれ違います。そこに辿り着けた人が幸せなんだと知りました。そして、それこそがお金から解放される手段なんだとも思いました。

いやいや、ちょっと待って、多く持ってたほうが良いじゃんという人もいると思います。確かにそうですが、そのお金は何なのか?
目的か手段かそれを見誤ると幸せにはなれないのではと小説を読んで感じました。
なぜなら稼ぐことが目的になるとお金があっても不安に苛まれてしまうからです。実際、物語に出てくる人にそんな人物が出てきます。そうなるとお金に支配される運命を辿ります。

だから、多すぎても、少なすぎてもダメ。ちょうど良い所を見つける。

それが答えなのではないかと自分は思いました。

ネタバレ

ここからはネタバレです。
主人公の大倉一男は、昼は図書館司書、夜はパン工場でアルバイトをしています。 失踪した弟の借金、三千万円を返済するために。
そのことが原因による価値観の違いによって、妻の万佐子は娘のまどかを連れて家を出て行ってしまいました。 残された一男はパン工場の寮に引っ越し、借金の返済に追われる日々を過ごしていました。 そんな一男にとっての唯一楽しみが、娘のまどかとの二人だけで会う時間でした。
 ある日のデート中、娘のまどかが熱心に見ているものがありました。それは商店街の福引で当たる景品の自転車でした。
一男は買ってあげると提案しますが、まどかは借金があることからそれを拒否します。 すると、偶然通りがかった老婦人から福引券をもらうことになり、これで自転車をプレゼントしようと意気込みます。結果は四等の宝くじ十枚。 失意の中、家に戻って調べると、なんと三億円が当選していたのです。
すぐに宝くじの当選者について調べると、突然大金を手にしたことで不幸になっていく人が後を絶たないという現実を知ります。 しかし、お金によって失った家族を取り戻せるのではと考える一男。
そして、『億男たちの金言』というサイトで様々な金言を目にする中で、ある言葉を見つけます。
『人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しお金さ チャーリー・チャップリン』  
この言葉を教えてくれたのは親友でした。 そのことがきっかけで十五年ぶりに親友に会うことを決意します。

親友の名前は九十九。 陰気な風貌ながら大勢の人を笑わせるほど落語が上手な男でした。 同じ落語研究会に所属し、周囲からは『一男』と『九十九』だから二人合わせて百パーセントと言われる関係でした。
そんな九十九とある時期を境に全く連絡をとっていなかった一男ですが、連絡するとすぐに繋がり、彼の家に行くことになります。 そこは九十九が立ち上げたSNS系のネットベンチャー企業のオフィス跡で、引っ越すのが面倒でここで暮らしているのだと言います。 一男の手にしたお金とは比べ物にならないほどのお金を持っているにも関わらず、昔と全く変わっていない九十九に一男は安堵します。

十五年前、九十九はモロッコ旅行で、「お金と幸せの答えを見つけてくるよ」と宣言し、一男から離れることを選んだのです。 そして今、一男はその答えを欲していました。
すると九十九はまずお金というものを知る必要があると言い、一男の三億円を全て現金でおろすように指示します。一男はそれに従って九十九の前に三億円を持ってきます。 さらに今度は豪遊し、一男もそれに流されて改めて大金を手にしたことを実感します。 一男が眠りに落ちる寸前、九十九は人間には自分の意思でコントロールできないものが三つある。
死ぬこと、恋すること、そしてお金だと言いました。
そして翌日、一男が目を覚ますと昨日の騒ぎが嘘のようにオフィスは静まり返っていました。九十九も一男の三億円も姿を消していたのです。 親友に裏切られ絶望していた一男ですが、三億円を諦められず探すことにします。 ネットや友人を頼りに九十九の情報を集めると、九十九の立ち上げたベンチャー企業が買収されていたことを知ります。 そして、同じベンチャー企業で働いていた安田十和子という女性に辿着くことに。
一男は九十九の行方を求めて彼女に会いに行きます。 十和子は九十九の行方を知りませんでしたが、代わりに自分の人生について話してくれることに。
彼女は母子家庭で育ち、母親からはお金のために生きてはいけないと教えられて育ち、お金が嫌いでした。 しかし、生まれつき恵まれた容姿を備えていた十和子は様々な男性と交際し、高価なプレゼントをいくつももらっていました。そのような経験がお金を欲する欲望とお金への嫌悪感になっていました。 そんな時、十和子は九十九と知り合い、自分と似た彼に恋をし、交際を始めます。 しかし、やがて九十九の会社が成功を収めると二人の関係はお金に翻弄されるように、破局を迎えます。 それから彼女は結婚相談所で今の夫と知り合い、結婚して平穏に暮らすことを選びます。 しかし、十和子は夫に内緒でベンチャー企業売却時に得た十億円、それから母親の残した二億円を所持していて、毎日それに触れては心を満たしているのでした。
帰り際、一男の家族の話になり、彼は弟の借金を払えば家族を取り戻せると信じていましたが、十和子はそれを否定します。 一男は何かを失っていて、それを見つけなければならないのだと言います。
九十九の情報は手に入りませんでしたが、代わりに十和子から同じ会社で働いていた百瀬と千住という人物の連絡先を入手することができました。
そして、一男はまず百瀬に会いに行きます。 待ち合わせ場所は競馬場のVIPエリアでした。 一男は百瀬から百万円を借り、百瀬の指示に従って二度の勝負をします。 一度目で百万円は一億円になり、二度目に一億円はゼロ円になりました。 想像もつかない大金の動きに気絶しそうになる一男でしたが、実は馬券なんて購入しておらず、これはあくまで一男の頭の中だけでの出来事でした。

  そして最後に会ったのが千住。 彼は現在は脱税目的で始めた宗教団体の教祖として多くの人に教えを広めていました。 ここでも千住の昔話が始まりました。
彼が応募の募集要項を見て九十九のベンチャー企業に応募し、いつしか親友になったのだと言います。 九十九、千住、百瀬、十和子は固い絆で結ばれていたはずでしたが、ある時買収の話を持ち掛けられ、大金に目がくらんだ三人は九十九を裏切ったのだと言います。
そして、九十九は誰も信用することができなくなったと言い、これこそが自分の罪なのだと千住語りました。
結局、3人と会ったが九十九の居場所は掴めませんでした。

話変わり、妻が本当に望んでいたこととは・・・。
一男と万佐子との出会いは図書館でした。通っていくうちに、いつしか毎週一冊の本を一男が選び、それを万佐子が借りていくという形で付き合いを続けていくことになります。やがて万佐子は求めていたものが一男だと気が付き、結婚したのでした。
ある日、再びまどかとデートをした一男は、彼女のバレエの発表会への参加を万佐子が許可したことを聞きます。久しぶりに万佐子と会った 一男は、三億円を取り戻し、再び三人で暮らす未来を語ります。しかし、それは叶わないと万佐子は言い返すのです。
彼女曰く、一男はお金を手にしたことで『欲』を失ってしまったのだと言いました。
もし家族が大切ならばお金がなくても一緒にいることが出来たのにそうしなかった。
それは、根本的には家族を失っても良いという心の現れなのだと万佐子は言います。
そこで離婚をしたいことを言い渡され、まどかもすでに知っているのだと聞かされます。 この発表会は、家族三人で共有できる最後の時間でした。 

バレエの発表会の帰り道、電車の中で一男の横に一人の男が座ります。 それが九十九でした。 彼は昔に話した人間の意思でコントロールできないものの質問を投げかけ、一男は答えられずに教えてほしいと頼みます。 すると九十九は「死ぬこと、愛することと違い、お金は人が自ら作り出したもの」だと答えます。
人間が発明し、それを信用して使う。 それは、もはや人間そのものではないかと、九十九は考えていました。 だから九十九はわざと三億円を隠し、十和子たち三人と会い、彼らの話を聞くよう仕向けたのです。
そして、チャップリンが言った『人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ』こそが答えだったのです。
一男今までの経験から言葉の意味を知りました。
そして、九十九があの頃から全く変わっていないことを一男は確信します。 最後に九十九はこうも言います。
「答えはもうすぐそこだったが、最後の一歩を踏み出せたのは一男のおかげで、やっぱり一と九十九を足して百パーセントなんだ」と。
それだけを言い残し、九十九はまたしても去っていくのでした。 残された一男の手元には、三億円がありました。

そのお金で最初に買ったのが娘への自転車でした。また、一緒に暮らしたい。それが諦め切れなかったのです。
新しく欲しいものは見つからない。でも今、失ったものを取り戻したいという欲が、一男生かし、明日へと送り出す。一歩、また一歩、足を前に踏み出すのでした。

まとめ

この小説を読んで思ったのは、お金だけではなく、これからの自分の喜びや行き方はどうしたいのかなど自分の歩み方を今一度考えないといけないなということです。

お金は幸せの手段でしかない。それを肝に銘じてこれからを考えていこうと思います。
自分なりの幸せを実現させるために。

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