想いの強さは時間や距離なんて関係ない。
それを些細な心情で伝えてくれる恋愛小説です。
小手鞠るいさんの小説
「空と海のであう場所」
☑ 本記事の内容
- 空と海のであう場所について
- 空と海のであう場所の感想
「空と海のであう場所」を読んで。
作者紹介
小手鞠るいさんは、日本の小説家、詩人、エッセイスト。
1982年に刊行された詩集『愛する人にうたいたい』(川滝かおり名義)で、詩人として出発。1995年に刊行された『玉手箱』で、小説家として再出発。『欲しいのは、あなただけ』『エンキョリレンアイ』シリーズ三部作、『愛を海に還して』『空と海のであう場所』『別れのあと』『ロング・ウェイ』などの恋愛小説作品で人気を博する。絵本の原作、エッセイ、児童書なども手がけている。代表作は『誰もいない』『九死一生』『美しい心臓』『アップルソング』など。
あらすじ
イラストレーターとして着実にキャリアを積んでいる木の葉に、作家となったかつての恋人アラシから一篇の物語が届く。
―――恋愛小説の名手が、時も距離も越える思いを描く、心ゆさぶる魂の愛の物語
ネタバレありの感想
この本は知り合いから紹介されました。
「感情や描写を上手く書き上げられていてとても読みやすい小説だから読んでみてと」
読んだ後、言っていることに納得しました。
共感できる心情や状況があったり、こんな恋愛をしてみたいと強く思ったりしたからです。
現在と過去を上手く織り交ぜながら物語りは進んでいきます。
主人公は架橋木葉という女性です。
イラストレーターとして活躍していた彼女の元にある仕事の依頼がきます。
童話の絵を描いてほしい。
担当者から依頼された童話の作者は、架橋木葉が恋をした五十嵐有為からでした。
その仕事を引き受けていくうちに、五十嵐有為への想いを回想していく木葉。
そして、本を通して五十嵐有為の想いを知っていきます。
最後はお互いの想いが通じ合って・・・
想い合う者同士が出会い、別れを繰り返していく・・・。会っては別れて・・・だけどどうしても会いたくなる。
物語の中心は架橋木葉の恋愛話になります。
良くある恋愛小説です。
でも、主人公が好きな人を思い続ける姿の中に、作者の人を想う繊細な感情が詰まっていると感じました。
木葉が有為に想う感情をなぞりながら流れていく物語は、有為が木葉に抱く想いを童話を通じて知らせていくことで、少しずつシンクロしていきます。
この流れを繊細に表現されていると思いました。
最後の方は少し強引でしたが、この本の題名を知ることに繋がるのでスッキリするはずです。
木の葉と同じように、思いが強ければ強いほど、言葉にならなくて、
上手く伝えられないことってあると思いました。
読んでいて「木葉」の気持ちも「有為」の心も、共感してしまいました。
両親を無くし、幼い頃から自分が生きていくために自分を保つために「嘘」を重ねながら
誰も信じられず生きてきた有為。だからこそ、人一倍「愛」が欲しかったんじゃないかなと感じます。
本の中の一文
「おなじ場所にとどまっていれば、人との交流が生まれる。
人と交わっていればそのうちきっと、だれかを好きになる。
だれかを好きになるということ。愛するということ。
遊牧民はそれが怖かった。
好きな人の前に、自分のすべてを裸にして、差し出すということ。心を明け渡すということ。
それは遊牧民にとって、息が詰まりそうなほど素晴らしい出来事であると同時に、
いつかまた裏切られるのかもしれない・・・ かつて、妻にそうされたように・・・ という、恐怖でもあった。
だから遊牧民は心に鍵をかけ、その鍵を捨てた。
これからは誰にも気持ちを動かされず、ひとりでひっそり生きていく。
どこにもとどまらず、たえず歩き続けながら。」
凄くわかる一文だったので、この文章が気になりました。
好きになっても裏切られる可能性がある。
誰もが思うことだと思います。
そのことを常に考えながらするのが恋愛なんだと改めて感じました。
五十嵐は特にこの想いが強かったんだと思います。子供の頃を経験がそうさせたのだと。
人を想う気持ちや繊細な感情を感じられる恋愛小説です。
誰もが共感出来ることがあると思います。
恋愛小説に興味があればぜひ読んでみて下さい。
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