ミステリー小説でありホラー。
そんなジャンルが突然変わる小説です。
井上剛さんの
「きっと、誰よりもあなたを愛していたから」
姉の自殺について、動機がないことから真実を知るために妹が奮闘する物語です。
ラストのどんでん返しで、ミステリーからホラーへと変貌します。
「きっと、誰よりもあなたを愛していたから」について
作者
井上剛
会社勤務の傍ら小説執筆を続け、「マーブル騒動記」で第3回日本SF新人賞を受賞し、2002年、デビュー。その他、「死なないで」「響ヶ丘ラジカルシスターズ」がある。
「きっと、誰よりもあなたを愛していたから」のあらすじ
冒頭の28ページ。読み返して気づく、その真実。鳥肌が止まらない。愛しているのは誰で、愛されているのは誰?想いの強さが生んだ悲劇の物語。お姉ちゃんが死んだ。首をつって。あたしと二人で暮らしていたマンションの自分の部屋で。姉の明香里は三つ違いで、綺麗で成績も良く、両親にとって自慢の娘だった。社会人二年目で、仕事も順調そうだったのに、何故?姉の携帯に残されていた四人の男のアドレスとメッセージ。妹の穂乃花は、姉のことを知るために彼らに会いに行く。待ち受ける衝撃のラストに、あなたは愕然とする!(書下し)プロローグ第一章 佐々木隆也第二章 巴美智彦第三章 典宮航生第四章 益田良一エピローグ-
読みどころ
・ミステリーからホラー
突然、死んだ姉の原因を調べ始める妹の穂乃花は、姉と関わりをもつ4人の男性と会うことにします。
男性たちと会っていく中で、徐々にわかってくる自分の知らない姉の姿。
そして、物語は終盤になって、突如、色合いが変わります。
狂気に満ちた想いがホラーへと変貌。
その想いを感じとったとき、鳥肌が止まらなくな流こと間違いなしです。
・人は仮面を被る
4人の男性から話を聞いていくうちに、姉の生き様が見えてきます。
それは妹の知る姉ではありませんでした。
そして、4人それぞれが語る姉の印象もまた違っていました。
人は仮面を被るように、その人ごとに対応を使い分けます。
それは自然とできてしまう人の能力です。
そういった人の本質を感じられる物語になっています。
・衝撃のラスト
謎を追う物語は、最後のエピローグによって、全てが変わります。
今までのことはなんだったのか、驚愕のラストは自分の目で確かめてください。
「きっと、誰よりもあなたを愛していたから」の感想
ミステリーでありながらホラー。
この物語は姉の軌跡を追って、自殺の真相を掴もうとします。
姉の生き方。妹の必死さ。
その一貫性で物語は進みます。
姉を愛した妹は、真実に辿り着けるのか…。
しかし、それはエピローグによって、全てが覆ってしまいます。
それを知ったとき、恐怖で血の気が引きました。
防ぎようのない恐怖、人はどこで悪意の標的になるか分からない。
その怖さをヒシヒシと感じました。
明香里は知らないうちに犯行に至る動機を作られてしまっていました。
それが理不尽すぎて、可哀想と思ってしまうほどに。
この理由に関しては共感できる人もいるはずです。
でも、ここまでするのかと思うはず。
それぐらいの恐怖でした。
あんなことをしといて、平然としていられる度胸にも恐怖を感じました。
普通じゃない。
また、姉自身の生き方を通して、人は仮面を被る生き物だと感じました。
人によって、態度を変えたり、話さなかったり。
その人のことを知りたくても全てを知るのは不可能。
だって、その人によって印象は操作されてしまうから。
それは自然にであったり、故意であったり、人によって違います。
この小説はそんな人間的本質を感じてしまう物語だと思いました。
ミステリー好き、ホラー好きの人はオススメです。
幽霊や人ならざるものが出てくる物語ではないけれど、
人の狂気を感じれると思います。
伏線が多数あったのでそれを探すのも面白いかもしれません。
この真相は自分の目でぜひ見てください。
コメント