自分の余命がわかっていたらあなたはその間どうやって過ごしますか?
普段、考えることのない疑問。
でも、いつ自分がそうなるかわからない。
そのとき自分はどうするのだろうか。
その答えの一つがここにあります。
余命10年とわかった少女の物語です。
今回は小坂流加さんの
「余命10年」
を紹介します。
遺伝の影響で自分の余命が10年しかないことを知った少女が、
絶望から希望を見つけて生きようとするお話です。
「余命10年」について紹介
作者:小坂流加(こさか・るか)
7月4日生まれ。静岡県三島市出身。第3回講談社ティーンズハート大賞で期待賞を受賞。本作の編集が終わった直後、病状が悪化。刊行を待つことなく、2017年2月逝去。
あらすじ
20歳の茉莉は、数万人に1人という不治の病にかかり、余命が10年であることを知る。笑顔でいなければ周りが追いつめられる。何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならない。未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごしていく。そして、何となくはじめた趣味に情熱を注ぎ、恋はしないと心に決める茉莉だったが…。
余命10年のネタバレありの感想を紹介
小説の冒頭に書いてある一文。
あと10年しか生きれないとしたら、あなたは何をしますか。
長いと思い悠然と構えられますか。短いと思い駆け出しますか。
あと10年しか生きれないと宣告されたのならば、あなたは次の瞬間、何をしますか。
この言葉を読んで、自分自身はどうするのだろうか。
それを考えさせられながら読みました。
読み終わってみて思ったのは、後悔しない生き方を目指したいということ。
確かに10年はあっという間な気もするし、長い気もします。
その間に何をするかは本人次第です。
だからこそ自分がどうするかで、人生は大きく変わっていくのだと強く感じました。
でも、命が続く10年と余命のある10年では、重さが全然違います。
その重さが痛いほどわかる、いや、伝わってきました。
この小説の作者、小坂流加さんは、本作の編集後、病気が悪化して亡くなりました。
なので、ここに書いてあることは、作者がモデルになっている部分もあると思います。
そのため、フィクションでありながら、実際に体験した部分も含まれているはずです。
だからこそ、リアルに感じ、心に響いてきたのだと思います。
軽々しくわかる!なんて言えないけれど、自分も同じ立場になったら同じ気持ちになってしまうのではないかと感じてしまいました。
普通の生活を送る人たちへの嫉妬。自分が生きていけないことへの自責。
かく章の終わりに書いてある言葉は、小坂流加さんの生き様を表していたんだと思います。
苦悩や喜び、決意や迷い、生と死の恐怖など、心情がそのまま書かれています。
そう考えたら、ただ泣いて、感動して終わり。にはなれませんでした。
1人の人間の壮大な内面を体験して、色々考えてしまいました。
心の奥のほうが縛られるような感覚。
それがこの本の感想です。
普通のことって本当に幸せなんだと思う小説でした。
多くの人に読んでもらいたい、一度は読んで欲しい小説です。
小坂流加さんはもう一つ小説を書いているので、気になったらぜひ。
こちらも心に響く何かがある小説です。
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